鹿沢園地に生息するエゾハルゼミ(体長27mm)
鹿沢園地に生息するエゾハルゼミ(体長27mm)

「ミョ~キン・ミョ~キン・ケケケケケ……」

初夏の落葉樹林にそんな鳴き声が響いています。声の主はエゾハルゼミ。寒冷地に生息する小型のセミで、ここ鹿沢園地にもたくさん生息しています。

「柔毛の密生している、節を持った、その部分は、まるでエンジンのある部分のような正確さで動いていた。――その時の恰好が思い出せた。腹から尻尾へかけてのブリッとした膨らみ。隅ずみまで力ではち切ったような伸び縮み。――……」

小説家の梶井基次郎(1901-1932)はセミをそんな風に描写しています。

案内板の下に抜け殻がありました
案内板の下に抜け殻がありました

セミはとても発音器官の発達した昆虫です。オスのセミの腹腔内には音を出す発音筋と発音膜、音を大きくする共鳴室、腹弁などの発音器官があります。発音筋は秒間2万回振動すると言われています。

いまエゾハルゼミはその小さな体を精一杯震わせて、森じゅうに響き渡る大合唱を私たちに聴かせてくれます。まるでセミたちが大声自慢の大会をしているようです。

ベニバナイチヤクソウ
ベニバナイチヤクソウ

セミたちの合唱が響く森の足元にはベニバナイチヤクソウがうつむいて咲き、初夏の高原に彩りを添えていました。