せんべい平の標識
標識には「アサギマダラの里」の文字が

長い距離を移動することで知られる蝶アサギマダラの観察会が、さる8月3日に小桟敷山こさじきやま(1,852m)とその周辺で行われ、総勢14名が参加しました。 小桟敷山の途中にあるせんべい平では、多くのアサギマダラを観察することができました。

アサギマダラが好むヨツバヒヨドリの花がたくさん咲いていました
アサギマダラが好むヨツバヒヨドリの花がたくさん咲いていました

せんべい平ではマーキング調査も行われました。 マーキングのために捕獲したアサギマダラの数は96頭で、うち雄が84頭(87.5%)、雌が12頭(12.5%)でした。 再捕獲された個体はありませんでした。

マーキングを体験した参加者の一人は、 「ここでマーキングされたアサギマダラが、またどこかで見つかるといいですね」 と話していました。

アサギマダラの移動範囲は?

アサギマダラは温かい南の暖地で越冬した後、気温の上昇とともに涼しい高原へと移動していきます。 南西諸島や台湾から日本本土の間を移動していることがわかっていて、その移動距離はときに2,000km以上にもおよびます。

調査から解った飛翔能力のすごさ

アサギマダラの移動経路や移動速度を調べるため、各地でマーキング調査が行われています。 その結果、アサギマダラの驚くべき能力が少しずつわかってきました。

  • 2011年10月10日に和歌山県から放たれたアサギマダラが、83日後の12月31日に香港で捕獲された。途中高知県でも捕獲されていて、移動距離は実に2,500kmにもおよんでいる。
  • 高知県大月町から沖縄県南大東島まで約783kmを3日で渡った個体が確認されている。1日平均260kmも飛んだことになる。
北海道上ノ国町
  • 大分県から放たれたアサギマダラが約2週間かけて北海道上ノ国町の海岸に飛来した。移動距離は直線で約1,160km。道南虫の会によると、国内での北上記録を大幅に更新する極めてまれな事例だという。
    北海道ニュースリンク 2013年6月4日

マーキング調査とは?

アサギマダラの翅は鱗粉が少なく、翅に油性マーカーなどで文字を書くことができます。 アサギマダラの翅に捕獲した場所・個体番号・捕獲した日付を記入して放します。 マーキングされた個体が再捕獲されれば、移動の経路と速さがわかります。

ヨツバヒヨドリに訪花するアサギマダラ
ヨツバヒヨドリに訪花するアサギマダラ

観察を行なったせんべい平は草原でしたが、マーキングの指導をしていただいた方の話によると、ここはもともと、森林地帯だったそうです。 多くの人たちに花を楽しんでもらおうと、草原環境を整備したところ、ヨツバヒヨドリやカラマツソウ、ノアザミなど、たくさんの花が咲くようになり、アサギマダラがやって来るようになったということです。 その上で、 「人と自然が適切に関わり合う事で、自然をより豊かなものにしていくことができます」 と話していました。

多くの生きものたちにとって、長い距離を移動することには、種々の危険がつきまといます。にもかかわらず、アサギマダラはなぜ、そんな危険を冒してまで長い距離を渡っていくのでしょうか?広い海の上で、どうやって渡り先の島を見つけるのでしょうか? アサギマダラの小さな体の中には、大きな不思議が詰まっています。