人になれたキツネ
人になれたキツネ

 湯の丸高原地蔵峠付近の路上で子ギツネを見かけました。 近くに寄ってみたところ、こちらに顔を向けたまま逃げようとしません。 観光道路にはしばしば、このような人になれたキツネが現れます。

野生動物は本来、人間に対して警戒心を持っています。 そのため、野生動物と人間の間には一定の距離が保たれています。 ところが、なんらかの原因でこの距離のバランスが崩れてしまうと、そこに様々な問題が起こります。

その一つに、野生動物と自動車の交通事故があります。 浅間山麓地域では毎年、タヌキやキツネなどが車にひかれて死んでいます。ときにはニホンジカがひかれていることもあります。時期は春から初夏にかけてと、晩秋から初冬にかけて、時間帯は夜間から早朝にかけて多く発生しています。 また、 野生動物は道路の見通しの悪いカーブにいる場合があり、それを避けようとした自動車同士の事故も起きています。

こうした事故は、車社会の発達とともに、道路が野生動物の生息域を分断してしまうために起こります。 道路は地域の環境を大きく変え、私たちの暮らしを便利にするものですが、反面、そこに生息する動物たちにとっては、ときとして生存に重大な支障をきたすものにもなり得ます。

この人をおそれないかわいらしい子ギツネは、人と野生動物の共存について、なにかを語りかけてはいないでしょうか。

(F)