浅間山の火口から北へ5kmほどのところに、地面に井戸のような穴がいくつも空いている場所があります。穴の大きさは直径50~200cm、深さは3~7mで、それが500個ほど集まっています。
この穴は、今から231年前の1783年(天明3年)8月に起きた、浅間山の大噴火によってできたもので、浅間山溶岩樹型と呼ばれるものです。溶岩樹型とは、溶岩流が森林に流れ込んで樹木を覆い、中の木が焼けたり、長い年月の間に腐ったりしてできた穴のことです。
溶岩樹型は一般に、溶岩の粘り気が少ない玄武岩の火山で見られる現象ですが、浅間山の溶岩は粘り気のある安山岩からデイサイト質で、溶岩流はあまり発生しま せん。この浅間山溶岩樹型は、溶岩流ではなく火砕流によって形成されたことが大きな特徴で、世界的にもめずらしいことから、1952年(昭和27年)3月 29日に国の特別天然記念物に指定されました。
浅間山溶岩樹型は往時の噴火の激しさを今に伝えるものですが、これを形成した吾妻火砕流は人家に到達しておらず、人的被害をもたらすことはありませんでした。
浅間火山博物館 (長野原町)では、浅間山の火山活動をジオラマや映像によりわかりやすく紹介しています。
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