朝、センターの入口の前で一羽の鳥が横たわっていました。 太くて黄色いくちばし。 黒い風切羽には一本の白い筋が鮮やかに入り、一部が金属的な光彩を放っています。 イカルでした。 「まだ生きているかもしれない」 そう思い、イカルをセンターで保護することにしました。
イカルは秋冬は平野部にいて、田んぼに落ちているもみなどを食べています。 夏になると山地の落葉樹林にやって来て、ヌルデやエノキ、カエデの実などを食べます。 太いくちばしを使って、硬い種子の殻を上手に割って食べるのです。 鹿沢の隣にある東御市はくるみの産地として知られていますが、あの頑丈そうなくちばしなら、くるみの殻だって割れそうです。
昼食を終えてセンターに戻って来ると、イカルは置いてきたときのままの格好をしていました。 静かに閉じられた目から涙のようなものが流れていて、下に敷いてある紙と目がくっついていました。 頭部の色は淡く、まだ若いようです。外部に目立つけがはありません。
「どうしてこんなことに……」
そんなことを考えているうちにどんどん時間は過ぎていきました。 いつの間にか外は雨が降っていました。 雨脚は次第に強くなり、雷が鳴りました。 帰り支度をしていると、雨と雷の中で、陽気な口笛のような音が聞こえてきました。 それはイカルの鳴き声でした。 雨の中で仲間を呼んでいたのでしょうか。
帰る時刻となり、センターの戸締りを済ませて表に出ると、雨は小降りになり、陽が差してきました。 右手に野草園を見送りながら帰ろうとすると、その景色がいつもと違っていることに気づきました。 七色の光の帯が弧を描き、野草園の端と端をつないでいます。 大きな虹が空にくっきりと浮かび上がっていたのです。 虹は村上山の上をすっぽりと覆うように架かっていて、まるで一枚の絵画のようです。 キャンプ場の方から人が集まってきて、歓声が上がります。
大きくて、丸くて、美しい虹。 どうして虹はこんなにも美しいのでしょうか。
それはきっと、この地上に限りあるいのちが住んでいるから。 虹は明日へ架かる橋。 希望を未来へつなごうとする生きものたちの意思。 それが、あれほどまでに美しく輝いているのだと、 あの太いくちばしのイカルが教えてくれたようでした。
鳥は生き物ですから、いつかは死んでしまいます。事故にあったり、餌が捕れなかったり、ほかの動物に襲われたりと、原因も様々ですが、なかには細菌やウイルス、寄生虫に感染している場合もあります。
野外で死んでいる野鳥を見つけたら、むやみに素手で触らないようにしましょう。 野鳥を取り扱った後は手を洗い、うがいをしましょう。
また、
- 猛禽類・・・1羽以上
- 水鳥・・・3羽以上
- その他の陸鳥・・・10羽以上
が同じ場所で死んでいるのを見つけた場合は、最寄の自治体の窓口まで連絡してください。