花の盛りは過ぎて、園地には実をつけている植物が目立つようになってきました。 そのうちのひとつに、ヌスビトハギがあります。
ヌスビトハギの実は写真のような形をしています。 この実の形が、抜き足差し足で忍び込む泥棒の足あとに似ていることからこの名がつきました。
園地の来訪者にこの実を見てもらうと、いろいろな反応が返ってきます。 なかには「メガネハギ」とか「エダマメハギ」と呼ぶ人もいます。 みなさんにはどんなふうに見えるでしょうか?
園地入口付近にあるシナノキも実をつけています。 実がついている枝の近くには、へらの形をした苞(ほう)があります。 シナノキの仲間はみな、このへら状の苞をつけるのが特徴です。
シナノキの樹皮からは繊維がとれます。アイヌの人たちはこれを「シ・ニペシ」と呼び、これがシナノキの名前の由来とされています。 花は香りがよく、お茶に用いられるほか、良質の蜜がとれます。 幹をゆったりと広げるシナノキの木陰に入ると、そこはとても居心地がよくて、くつろいだ気分になれます。
ちなみにドイツには、シナノキの仲間であるリンデンバウムという樹があります。 この樹の下に人々が集い、憩いが生まれ、そこは心から休息を楽しむ場所になりました。 ドイツの人たちはリンデンバウムを「集いの樹」、「憩いの樹」と呼んで、とても大事にしています。
小さな湿原に舞い飛んでいるのは、赤トンボの仲間のアキアカネです。 短い高原の夏は終わりに近づいてきました。 鹿沢はこれから、日に日に秋の気配を深めていきます。