台風一過の晴れ間が広がる鹿沢で、羽化したばかりのコエゾゼミを見つけました。
名前に北海道を意味する「エゾ」とありますが、長野県でよくみられます。
コエゾゼミの近縁種にクマゼミがあります。クマゼミは南方系の大型のセミで、幅広の頭部を持ち、コエゾゼミをひと回り大きくしたような体をしています。
クマゼミは20世紀後半から西日本の都市部で増加が目立つようになりました。これらの都市部では、アブラゼミからクマゼミへと優占種の交代が起きており、ニイニイゼミやツクツクボウシの姿はあまり見られなくなりました。
クマゼミはもともと南の暑い地域に生息しているセミです。クマゼミが増えている大阪では、地球規模の温暖化に加えて都市特有のヒートアイランド現象が加わり、戦後から現在まで、10年あたり0.29℃と驚異的なペースで温暖化が進みました。
ヒートアイランド現象
都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて高温を示す現象。
- 原因
-
- 緑地や水面の減少
- アスファルトに覆われた地面やコンクリートの建物からの輻射熱の増大
- 自動車やエアコンからの排熱の増大
- ビルの密集による風通しの悪化
クマゼミは暖地性のセミですが、エゾゼミ同様寒さには強く、寒冷地でも越冬することができるようです。しかし、孵化した幼虫は乾燥に弱く、雨の多い時期でないとうまく成長することができません。クマゼミの孵化は通常7月後半から8月にかけて起こりますが、温暖化によって徐々に孵化のタイミングが早まっていて、梅雨の時期と重なるようになってきています。
孵化のタイミングと梅雨の時期が重なったことで、クマゼミは安定して孵化するようになり、数が増加しているのです。
クマゼミを観察すると、そこから私たちが暮らしている環境の変化が見えてきます。
(F)