樹皮が大きくはがれたリョウブを見つけました。どうやらニホンジカが食べるために樹皮をはぎとったようです。

樹皮が大きくはがれたリョウブの幹
樹皮が大きくはがれたリョウブの幹

近年、ニホンジカは全国的に増えています。これに伴い、シカが樹皮を食べることで森林が衰退したり、生物相が変化するなどの影響が目立つようになってきました。

ニホンジカ増加の影響は南アルプスや尾瀬などの国立公園にもおよんでおり、鹿沢でもこのところ、毎日のようにシカの鳴き声を耳にします。

現在、環境省や自治体では、増加するニホンジカから森林や貴重な高山植物を保護するため、自然保護団体などと連携してニホンジカの生息調査をしたり、ハンターの育成やジビエ料理の普及推進などの対策を進めています。

その一方で、シカの生息場所となる草原環境に目を向けてみると、今日の日本では、九州の阿蘇や長野県の霧ヶ峰などの一部地域を除き、広大な草地を見ることは珍しくなりました。日本の平地部は主に農地や宅地・市街地が広がり、山地部に見られる植生の大部分は森林になっています。

日本の森林面積は国土の約66%を占めていますが、草原の面積は1%あまりといわれています。それらの草原の多くは、野焼きや機械を使った刈り払いによって維持されています。 しかし、かつて日本には広大な草原が存在していました。そしてそれらの一部はシカの食圧や河川の氾濫はんらん、人間による草地の利用などにより維持されていました。

シカ問題を考えることは、こうした日本の草原の現状を見つめ直す機会にもなるのかもしれません。

(F)

  • 小椋『日本の草地面積の変遷』