すっかり葉を落とした木の枝にホオジロがとまっています。
ホオジロは初夏から夏にかけて、木の梢などよく目立つところに出てきて、胸を大きく反らせてさえずります。
そのさえずりは、
「一筆啓上仕り候 」
「サッポロラーメン味噌ラーメン」
などと聞きなしをされます。
ホオジロのさえずり
ホオジロはかつて、カッコウに托卵されることの多い鳥でした。
托卵とは
托卵とは、自分ではいっさい子育てをせず、ほかの鳥の巣に産卵し、子育てのすべてを任せてしまうこと。 日本では托卵をする鳥はカッコウ、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチの4種類。 托卵されるのはホオジロ、オオヨシキリ、モズ、オナガなど。
托卵の仕方は巧妙で、托卵をする鳥は産卵中の宿主の巣から卵を1個抜きとった後、自分の卵を1個産み込む。 産み込まれた卵は宿主のひなより1日か2日前にふ化し、宿主の卵を背中のくぼみにのせ、すべて巣の外に放り出してしまう。 こうして巣を独占したひなは宿主の世話を一身に集めて育てられる。
親は大変な子育てをほかの鳥に任せ、子は托卵先の卵に危害を加える・・・
そんないとなみをするカッコウはずるくて残忍に見えますが、托卵される側も、いつまでもだまされ続けているわけではありません。
信州大学の中村浩志教授の研究によると、ホオジロは次第にカッコウの卵を見分けるようになり、その結果、カッコウはホオジロへの托卵をあきらめ、代わりにオナガの巣へ托卵するようになってきているというのです。
どうやらカッコウのくらしも楽ではなさそうです。
カッコウはいくつかの鳥に托卵しますが、メスが托卵する鳥の種類は決まっています。
オオヨシキリに育てられたカッコウはオオヨシキリに、モズに育てられた場合はモズに托卵します。
鳥は最初に見た動くものを親だと思います。
カッコウはそれが記憶として残り、親になった時に自分を育てた鳥に托卵をすると考えられます。
カッコウにしてみれば、
「自分の子の面倒を親に見てもらう」
という感覚なのでしょう。
カッコウの持つ托卵というしたたかな習性。
しかしその裏側には、本当の親を知らずに育った、鳥としての悲しさがあります。
さらにカッコウには、托卵をせざるを得ない特殊な事情があります。
カッコウはほかの鳥よりも体温を一定に保つ能力が低く、昼夜で体温が大きく変動します。
夜になると体温が下がるので、自分で卵を温められないのです。
海外には、カッコウの仲間でありながら自分で子育てをする鳥もいます。
北アメリカ南部からメキシコの砂漠地帯に生息するオオミチバシリは、発達した足を持ち、速く走るのが得意なカッコウの仲間です。 その速度は時速30kmを超え、これは飛べる鳥の中では最速です。
暑い砂漠の中にいるオオミチバシリは、抱卵に適した体温を保つことができるので、自分で子育てをしています。
(F)