「ピーマンに似た実がなっているのを見たのですが・・・」
来館者からそんな声が寄せられたので、現地へ行ってみることにしました。そこにあったのはウバユリの実。
なるほど。確かにピーマンに似ていますね。
ウバユリはユリ科の多年草で、本州の中部以北、北海道に分布し、やや湿り気のある林内、林縁に生えています。和名の「ウバ(姥)」は、花が咲く頃には、 根元の葉が枯れてなくなるので、「葉なし」を「歯なし」にかけて、姥(老女)に見立てたものです。茎は枯れた後も冬の間じゅう実をつけたまま立っています。
ウバユリには鱗茎と呼ばれる球根があります。この鱗茎から取れるデンプンは、アイヌの人たちの大事な食べ物でした。さらに、デンプンを取った後の残りかすを発酵させて「オントゥレプ」という保存食も作られていました。
以前の記事で、嬬恋村の郷土料理「くろこ」 をご紹介しました。くろこは馬鈴薯からデンプンを取った後の残りかすを発酵させて作る保存食です。「オントゥレプ」と「くろこ」は原料となる植物は異なるものの、製法はよく似ています。
嬬恋村は地名などにアイヌ文化の影響が見られることが研究者から指摘されていますが、「オントゥレプ」と「くろこ」の間にも興味深い関係を見ることができます。
(F)