カエデというと、まっさきに思い浮かべるのは、秋の鮮やかな紅葉ではないでしょうか。
けれども、そのカエデが春にどんな花を咲かせるか、みなさんはご存知ですか?
いま鹿沢で咲いている3つのカエデの花を見てみましょう。

イタヤカエデ

花の色:黄色紅葉の色:黄色

イタヤカエデの花
イタヤカエデの花
  • 北海道から九州まで日本の広い範囲に分布するカエデの仲間。東北地方など寒い場所の山地に多い。大きな五角形の葉が空を覆う様子を、板葺きの屋根に見立ててイタヤカエデと名付けられた。
  • 秋に葉が黄色くなるカエデの代表だが、別名「トキワカエデ(常磐楓)」のとおり基本的には秋季も緑色の葉を保ち、落葉直前のみ黄葉(稀に紅葉)する。寒冷地ではキレイに紅葉するが、街中ではその大きさゆえに無残に剪定されているものが多い。
  • イタヤカエデは生育地が広いため環境による変種が多い。葉の形は地方や樹齢によって異なるが、基本的には対になって生じ、ほぼ円形で浅く拳状に裂け、先端が尖り、葉の縁にはギザギザがない。
  • カエデの仲間としては花が目立つ樹種で、4~5月頃の芽出し前、枝いっぱいに黄緑色の花を房状に咲かせる。花が目立つため「ハナカエデ」や「ハナノキ」と呼ぶ地方もあるが、本種とは別にハナノキというカエデの仲間があってややこしい。花の後にできる実には2枚の羽根があり、10月頃に成熟する。
  • カエデの仲間ではもっとも大きく育ち、材が白くて美しいことや弾力性に富むことから建材、器具材のほか、家具、楽器、バット、こけし、スキー板などに使われる。
  • 早春、幹に穴をあけるとサトウカエデなどと同様に甘いシロップを採取することができる。この樹液は煙草の香料にも使われる。

育て方のポイント

  • 肥沃な土地を好むものの、丈夫な性質を持ち、あまり環境を選ばずに育つ。
  • 成長が早く、巨木になりやすい。直径1mに達するものも見られる。このため大胆に剪定されることが多いが、夏場に大枝を切ると枯れこみやすい。

ハウチワカエデ

花の色:赤色紅葉の色:赤色

ハウチワカエデの花
ハウチワカエデの花
  • 本州以北の山間に自生するモミジの仲間(北海道を原産地とする説もある)。関東地方では標高1000m以上の高地に見られる。
  • 葉は直径10センチを越すものもあり、日本のモミジでは一番大きい。また、形が、映画や芝居に出てくるような鳥の羽で作った団扇に似ていることから羽団扇楓と名付けられた。
  • 幹が直立しがちであることや枝葉の出方が単調であることから、本来は庭木として使用されることが少なかったが、秋の紅葉(黄葉)が美しいことから雑木の庭などで使われるようになった。紅葉は場所や個体によって色が微妙に異なり、環境が良ければ非常にカラフルな景色を作る。
  • 4月から5月にかけて咲く花は、雄花と両性花が混ざった紅白色で、モミジの仲間とは思えないような様相を呈する。

育て方のポイント

  • 自然環境ではブナなどの陰になるような場所でも見られる。陽射しが強すぎる場所では葉焼けが起きるため、半日陰程度の場所がよい。

ウリハダカエデ

花の色:黃色紅葉の色:橙色

ウリハダカエデの花
ウリハダカエデの花
  • 東北地方北部から九州まで広い範囲にわたって自生するカエデの仲間。山間の開けた斜面や谷筋に多い。若い木の樹皮が瓜のような縞模様になるためウリハダカエデと名付けられた。
  • 葉は直径12センチ前後でカエデ類の中では大きめ。3つから5つに裂けるのが普通だが、裂け目が浅いなどの変種が多い。紅葉は遅いが明るめの赤や黄色で、葉が大きいぶん目をひく。
  • 花期は5月~6月で、葉の展開とともに黄緑色の小花が十数個ぶら下がるように咲く。あまり目立たず、「遠慮」や「自制」といった花言葉がある。
  • 10月頃に熟す実はスダレのようになり、その様子の面白さから生け花の脇役として使われる。
  • ウリハダカエデの葉は食用になる。また、材は白くて美しく箸や紙の原材料になる。紐状の枝の細片はかごや縄を編むのに使われる。

育て方のポイント

  • 放置されたような山林に勝手に生える丈夫な木であり、特段の配慮はいらないが、他のカエデ類と同様に湿気のある日向を好み、半日陰では枝葉がまばらになる。
  • 成長がかなり早い上、剪定を好まないため狭い庭には向かない。

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